超ショートショートでGO

不定期に超ショートショートを書きます

愛し合う退屈

それは幼稚園、年中さんの時だった。
タケルから誕生日プレゼントとしてもらった、四葉のクローバー。
それが最初だった。
次の年は、10円の駄菓子。
少しずつ「いいもの」になっていった。
私もタケルへのプレゼントはちょっとずついいものを贈るようになり、今年でもう20年目。

ここ数年、プレゼントを贈っても反応が薄い気がする。うれしそうな顔をし、「ありがとう」とは言ってくれるけども。
そういう私も、最近は心から喜べなくなっている。
タケルがくれるプレゼントの金額ばかり気になる。彼のプレゼントよりほんの少し高いものを選ばなくてはならないからだ。
そろそろ世間一般的なOLには苦しい金額になってきている。

そして私の誕生日。
「喜んでもらう為にプレゼントを贈るのに、最近はそんな事を考えていなかった気がする」
そう言って、タケルが差し出したのは四葉のクローバーで作った栞だった。

金持ちウサギ

とある大金持ちが飼っているウサギが脱走したというニュースが流れた。
テレビでも呼びかけをし、その時のインタビューで金持ちは「餌に金粉を混ぜていた」という話をうっかりしてしまった。
そこで「ウサギの体内には1kg相当の金が含まれているのではないか」という噂が出た。
金1kgといえば、約480万円相当。
金持ちの提示した謝礼金100万円をはるかに上回る金額だ。
噂の出所や真偽は定かではないが、一斉にウサギ狩りが始まった。
丸々と太ったウサギは金持ちのウサギかどうかも確かめられないまま、火葬場で焼かれた。金を取り出すためだ。

私もそのウサギを捕まえんと森に入っている。
運のいいことに先ほど、金色が混じったウサギの糞を見つけた。
おそらく近くに巣穴を作っているはずだ。
早く見つけなくてはならない。
ウサギを焼いたところで金は出ない。
だって、金粉は吸収されずそのまま体外に出るのだから。この金粉の混じった糞が証拠だ。
焼いてしまっては飼い主も捕まえた人も、どちらも幸せにはなれない。 早く100万円を見つけよう。

ウサギの足跡を追っていると、香ばしい匂いがしてきた。
私は金色の糞集めをすることにした。

透明な友達

5年前、「透明な友達」が発売された。
文字通り透明で姿が見えないが、確かに存在するらしい。
しゃべる友達がいなかったり、SNSに疲れた人が本音を語るためだったり、所謂「リアルなコミュニケーション」を促進するための画期的な商品である。
どうやって透明にしているのかは企業秘密のため明かされなかった。
大変な注目を集めたが、はっきり言って気味が悪いので誰も買ってくれず、今も「透明な友達」は倉庫の中で静かに君に買ってもらうのを待っている。